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妖怪の事典

山童

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【やまわろ/やまわらわ】

 九州地方に伝わる妖怪。
 河童が山に入ると山童になるともいう。

山童の伝承・逸話

熊本県

 ガラッパが秋の彼岸に山へ行き、ヤマワロになる。そして、春の彼岸になるとまた川へ戻り、ガラッパになると伝えられている。
 葦北郡佐敷町では、彼岸の頃に何千匹もの山童の大群が行列になって、賑やかに声をあげながら屋根を伝って下山してくるのだという。しかし、彼らの下山を見ようとしてはいけない。この日にヤマワロの姿を目にすると、病気になったり、悪いことが起こったりするという。人々は彼岸の時期の外出を控えたそうである。

 また、ヤマワロの通り道のことをオサキといって、そこに炭竈や家を建ててはいけないとされていた。オサキに建てた家には穴が空いてしまうという。

 だが、山童は人々にとって必ずしも怖ろしいばかりの相手ではなかったらしい。
 葦北郡では、一日で山仕事が終わらなそうなとき、老人たちが「山の若い衆にでも頼むか」と言っていたという。「山の若い衆」とは山童のことである。

鹿児島県

 山童は深山にいるもので、大木の運搬を手伝ってくれるという。
 仕事をさせてから飯を与えてあげると、日々手伝いに来てくれる。しかし、仕事前に飯を与えると、飯だけ食って仕事をせずに逃げ去ってしまう。

 また、人よりも先に立つことや、塩気のあるものを嫌うともいう。

 人間側が友好的に接しているうちは無害に思えるが、もし人間が「山童を打とう」とか「殺そう」などと考えると、山童は敏感にそれを察知して祟るという。発狂したり、重い病気に罹ったり、家が燃えたりするから、山童に手出しする者はいないそうである。

山童の画図

 江戸時代の絵巻や図譜には一つ目の山童の姿が度々描かれている。

【山童の画図が掲載されている主な資料】
 資料名 作者 制作年 妖怪名 画像
『化物づくし』(個人蔵) 不明 不明 山わらう
『百怪図巻』(福岡市博物館蔵) 佐脇嵩之 1737 山わらう 画像
『画図百鬼夜行』前篇 陰 鳥山石燕 1776 山童 画像
『化物絵巻』(川崎市市民ミュージアム蔵) 不明 1800年代前半? 山わらは


『百怪図巻』「山わらう」 佐脇嵩之 1737


『画図百鬼夜行』前篇 陰「山童」 鳥山石燕 1776

主な参考資料

[文献]
『鳥山石燕 画図百鬼夜行』: 32ページ 高田衛 監修、稲田篤信 田中直日 編 国書刊行会 1992
『全国妖怪事典』(小学館ライブラリー): 236、238、256ページ 千葉幹夫 編 小学館 1995
『妖怪事典』: 353-354ページ 村上健司 毎日新聞社 2000

白沢

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