天狗 |
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【てんぐ】 日本各地に伝わる妖怪。 天狗の概要中国天狗という言葉はもともと中国から来たものであるが、中国における天狗は、日本の天狗とは大きく異なっている。 中国では天狗と書いて「テンコウ」と読み、古くから音を立てて飛ぶ流星のことを「天狗星」と称していた。そして、そのような星が地上に落ちたところには犬がいるのだという。天狗はその名前の通り、天の狗だったのだ。 中国古代の地理書『山海経』を構成するひとつである「西山経」にも、動物の姿をした天狗が蛇を咥えている様が描かれている。この「西山経」によると、天狗は陰山にいる獣で、狸に似ていて、首が白く、声は また、天狗を女の悪霊だとする説もある。 日本 片や日本の天狗はというと、山伏の姿をしており、顔が赤く鼻が高い。また、それとは別に鳥の顔をした天狗もいて、そちらは烏天狗と呼ばれる。民間伝承では具体的な姿が語られていない場合も少なくない。 山に棲むとされ、神通力を駆使して多種多様な怪異を起こすという。 以下の項目では日本の天狗について記載する。 日本の天狗の来歴飛鳥時代 日本の記録で初めて天狗が登場するのは飛鳥時代である。 こうして始まった日本の天狗史だが、そこから約400年、文献上では天狗の記述がほとんど見られないそうである。天狗が活発化しだすのは平安時代の中期になってからとなる。 平安時代平安時代中期に成立した『宇津保物語』では、天皇が北野に行幸された際に山から琴のような不思議な音が聞こえてきて、これは天狗の仕業ではないかと、藤原兼雅が調査に向かう場面がある。紫式部の『源氏物語』にも天狗について触れている部分があり、人をあらぬ場所に連れて行ってしまう妖怪として扱っていた。 この頃の天狗は旻僧が語ったような流星に類するものではなく、山にいる目に見えない存在となっている。 中世 さらに時代が進むと、天狗に「仏法者の妨害をする存在」という特徴も加わる。 また、山岳宗教である修験道は、天狗を山の精霊のような存在として捉えた。修験道の天狗は、寺院や修行者を守護しつつ、ときには嵐を起こしたり神隠しに遭わせたりといった恐ろしい面も見せる。このような天狗が日本各地の山々で、○○山の××坊といった名称で伝えられていった。 江戸時代~現代 江戸時代頃になると、顔が赤く鼻の高い天狗が有名になっていった。そのような姿の天狗が現れた背景には、猿田彦や修験道の天狗からの影響があったらしい。 現在一般的に知られている天狗の姿や特徴は、江戸時代の人々が思い描いていた鼻高天狗や烏天狗からほとんどそのまま引き継がれているようである。 民間伝承の天狗の分類民俗学者の宮本袈裟雄によれば、民間に伝わる天狗は大きく4つに分類できるという。
天狗はこのように多面的な性質を持ちながら、日本各地に逸話を残しているのである。 天狗による怪異天狗が引き起こすとされる不可思議な現象が各地で伝えられている。 各地
天狗隠し - 若者や子供をさらう。 岩手県
天狗なめし - 天狗倒しのこと。 福島県空木返し - 天狗倒しのこと。 埼玉県天狗笑い - 歩行者に向かって叫んだり笑ったりする。一部の人にしか聞こえない。 神奈川県
天狗の火事知らせ - 木を倒す音や「ヨイショヨイショ」という声が聞こえる。火事の前触れ。 山梨県
天狗の能 - 正月14日頃、どこからともなく鼓笛の音がする。 岐阜県天狗の太鼓 - 曇りの日に山から太鼓の音がする。天気が変わる前触れ。 静岡県
天狗囃子 - 夏の旱魃の時期に、山の中で囃子の音がする。 宮崎県天くづし - 雨が降る山の中で、木が倒れる音がする。 |
天狗の面を背負った金毘羅参りの旅人が描かれている。 田楽に興じる北条高時のもとに天狗が現れたという『太平記』の逸話を題材にした作品。
(出典:国立国会図書館デジタルコレクション) |
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主な参考資料
[文献] |
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