奈良県、静岡県に伝わる妖怪。
伝承・逸話
奈良県
宇陀郡
背後から人がつけてくるような足音がするというもの。
ベトベトサン 大和の宇陀郡で、獨り道を行くとき、ふと後から誰かゞつけて來るやうな足音を覺えることがある。其時は道の片脇へ寄つて、
ベトベトさん、さきへおこし
といふと、足音がしなくなるといふ(民俗学二卷五號)。
『民間傳承』第三卷・第十二號: 12ページ「妖恠名彙(三)」 柳田國男 民間傳承の會 1938
【底本】『民間伝承』第一巻 民間伝承の会 編 国書刊行会 1972
大阪の方言で、あとを引く、終始、ねばりつくといったことを「べったり」というそうです。ベトベトさんの「ベトベト」も、後ろをついてくるという意味があるのかもしれません。
静岡県
静岡市
千葉幹夫・編『全国妖怪事典』には、編者の聞書によるものとして静岡市のベトベトサンについて掲載されています。
こちらのベトベトサンも特徴は奈良県の伝承とあまり変わらないようで、やはり後ろから足音が聞こえる怪だとされます。小山を降りるときにこれに出会った人が、道の傍らに寄って「お先にお越し」と言ったところ、足音がしなくなったそうです。