妖怪の事典

狸囃子たぬきばやし

 日本各地に伝わる怪異。

概要

 夜、どこからともなく太鼓や笛の音が聞こえてくるというもの。
 聞こえる方に近づいてみても、音は遠のいたり聞こえなくなったりして、出所を見つけることができません。狸の仕業であろうといわれています。

タヌキバヤシ 狸囃子、深夜にどこでとも無く太鼓が聞えて來るもの。東京では番町の七不思議の一つに數へられ(風俗四五八號)、今でもまだ之を聽いて不思議がる者がある。東京のは地神樂の馬鹿ばやしに近く、加賀金澤のは笛が入つて居るといふが、それを何と呼んで居るかを知らない。山中では又山かぐら、天狗囃子などゝいひ、之に由って御神樂嶽といふ山の名もある。

『民間傳承』第三卷・第十號: 12ページ「妖恠名彙」 柳田國男 民間傳承の會 1938
【底本】『民間伝承』第一巻 民間伝承の会 編 国書刊行会 1972

伝承・逸話

東京都

千代田区

 番町七不思議のひとつ。
 深夜、どこからか聞こえてくる太鼓の音。

 鈴木桃野の『反古のうらがき』には次のような話があります。
 ある人が番町の狸囃子の正体を確かめようとしたものの結局わからず、化け物のせいなのだと恐れていました。しかし、後に桃野が聞いた話によれば、番町は囃子が好きな人が多くいて、毎夜のように囃しているのですが、周りに配慮して土蔵や穴蔵で囃すものですから、その音が風に乗って遠のいたり近づいたりするのだろうと推測しました。

『本所七不思議之内 狸囃子』 歌川国輝(三代目) 1886

主な参考資料

[文献]
『民間伝承』第一巻 民間伝承の会 編 国書刊行会 1972
『全国妖怪事典』(小学館ライブラリー): 69ページ 千葉幹夫 編 小学館 1995
『妖怪事典』: 213ページ 村上健司 毎日新聞社 2000

[ソフトウェア]
『水木しげるオフィシャルBOX 妖怪世界遺産』 講談社 2002

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