京都府に伝わる妖怪。
伝承・逸話
京都府
船井郡西別院村笑路
西光寺のそばにある榧の木の下に坊主のような男性がいて、盛んに算盤を弾くのだそうです。
算盤坊主 西別院村笑路の西光寺の傍に、一本の榧の木があって、そこを夜おそく通ると、坊主のような風体の男が、その木の下で盛んに算盤を弾きだすと云う事である。俗に算盤坊主と云って、狸の仕業かもしれないと謂っているが、何でも昔この寺の小坊主が、計算の事から和尚に罵られ、この木で首を吊って死んだのだと云う話もある。
『口丹波口碑集』「口丹波炉辺話」 垣田五百次 鄕土研究社 1925
【底本】『日本民俗誌大系』第四巻 近畿: 307ページ 角川書店 1975
ソロバンボウズ 路ばたの木の下などに居て、算盤を彈くやうな音をさせるから算盤坊主(口丹波口碑集)。
『民間傳承』第三卷・第十號: 12ページ「妖恠名彙」 柳田國男 民間傳承の會 1938
【底本】『民間伝承』第一巻 民間伝承の会 編 国書刊行会 1972
ちなみに、算盤坊主の伝承地となった西光寺の隣には素盞鳴神社があり、そこには算盤小僧が現れたという話があります。
夜中になると木の下に少年が出てきて算盤の稽古をしていたという、算盤坊主と似たような話になっているのですが、じつはこちらは妖怪話ではありません。少年は後に西光寺を開山する万安英種和尚だったのです。幼い頃から人知れず勉学に励んでいたのですね。