福島県に伝わる怪異。
伝承・逸話
福島県
田村郡、南会津郡
斧で大木を切り倒す音がしますが、地面に着く音は聞こえません。天狗の仕業とされていたようです。
ソラキガヘシ 耳のまぼろし、天狗倒しといふものを、福島縣の一部では天狗の空木返しといふ。斧の音とめり/\と倒れる音まではして、どしんと地に着く響きは聞えぬといふ。
『山村語彙』: 22ページ 柳田國男 大日本山林會 1932
ソラキガヘシ 天狗倒しのことを福島縣の田村郡、又會津でもさう謂つて居る。鹿兒島縣の東部でも空木倒しといふ。斧の音・木の倒れる音はして、地に着く音だけはしないと前者ではいひ、他の一方でも丸で木を倒す通りの音をさせるが、たつた一つ材木の端に牛の綱を通す穴をあける音だけはさせぬので、眞僞を聽分けることが出來るといふ。其音のする場所は一定して居る。
『民間傳承』第三卷・第十一號: 12ページ「妖恠名彙(二)」 柳田國男 民間傳承の會 1938
【底本】『民間伝承』第一巻 民間伝承の会 編 国書刊行会 1972