妖怪の事典

しずもち

 栃木県に伝わる怪異。

伝承・逸話

栃木県

芳賀郡益子町

 遠くから餅の粉を叩くような音が聞こえるというもので、その音が近づいてくるように聞こえたり、あるいは遠ざかるように聞こえたりします。音が近づくことを「搗き込まれる」といい、そのように聞こえたときは運が開けます。しかし、遠ざかるように聞こえると「搗き出される」といって、運が衰えてしまうとされています。

シヅカモチ 下野益子邊でいふ(芳賀郡鄕土研究報)。夜中にこつ/\こつこつと、遠方で餅の粉をはたくやうな音が人によつて聽える。其音が段々と近づくのを搗込まれるといひ、遠ざかつて行くのを搗出されるといひ、靜か餅を搗出されると運が衰へる。搗込まれた人は、箕を後ろ手に出すと財産が入るとも謂ふ。或は又隱れ里の米搗きとも謂ひ、此音を聽いた人は長者になるといふ話もあつた。攝陽郡談、攝津打出の里の條にもある話で、古くから各地でいふことである。

『民間傳承』第三卷・第十號: 12ページ「妖恠名彙」 柳田國男 民間傳承の會 1938
【底本】『民間伝承』第一巻 民間伝承の会 編 国書刊行会 1972

主な参考資料

[文献]
『民間伝承』第一巻 民間伝承の会 編 国書刊行会 1972
『妖怪事典』: 179ページ 村上健司 毎日新聞社 2000

[ソフトウェア]
『水木しげるオフィシャルBOX 妖怪世界遺産』 講談社 2002

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