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畳叩き

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【たたみたたき】

 高知県に伝わる妖怪。

畳叩きの伝承・逸話

高知県

   小八木屋敷の古狸 甲
 今は昔、高知城下中島町に、小八木某という大身の侍住めり。家居もいと裕かに屋敷広く、庭の木立も深く泉水なども勝れて美しかりしに、家の西表に巨大なるえのきあり。その元に祖先の神を斎き祀り、玉垣など結い廻し家人も常には至らざりしが、そこにいつの程よりか年経たる古狸が住んでいた。
 この狸の怪しきは夜更け人定まりたるころ、畳の塵を打ち払うような音する事にて世に小八木の畳叩きというて評判のものであった。そうしてその音の怪しきは家内にはすべて聞こえず、ごく近隣の人にも聞こえず、却って二、三町遠方の人にはよく聞こえしとぞ。このころ城下のある民は子供の泣き已まぬ時に、そら畳叩きが聞こゆるぞというて威かすと、泣き已まぬ児は無かったということが、ある記録に書き載せられているを見れば、相応に名高かった話と見える。

『土佐風俗と伝説』 寺石正路 鄕土研究社 1925
【底本】『日本民俗誌大系』第三巻 中国・四国: 234ページ 角川書店 1974

タタミタタキ 夜中に疊を叩くやうな音を立てる怪物。土佐では是を狸の所爲として居る(土佐風俗と傳說)。和歌山附近では是をバタバタと謂ひ、冬の夜に限られ、續風土記には又宇治のこたまといふ話もある。廣島でも冬の夜多くは雨北風の吹出しに、此聲が六丁目七曲りの邊に起ると碌々雜話に見えて居る。そこには人が觸れると㾗になるといふ石があり、或は此石の精がなすわざとも傳へられ、仍て此石をバタバタ石と呼んで居た。

『民間傳承』第三卷・第十號: 12ページ「妖恠名彙」 柳田國男 民間傳承の會 1938
【底本】『民間伝承』第一巻 民間伝承の会 編 国書刊行会 1972

主な参考資料

[文献]
『民間伝承』第一巻 民間伝承の会 編 国書刊行会 1972
『日本民俗誌大系』第三巻 中国・四国: 234ページ 角川書店 1974
『妖怪事典』: 211ページ 村上健司 毎日新聞社 2000

白沢

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