妖怪が集う遊宴
妖怪の事典

産女/姑獲鳥

【PR】

【うぶめ】

 日本各地に伝わる妖怪。

産女の概要

 難産で死んだ女の霊だとされる。

 夜道や川辺で、赤子を抱きながら泣いている。通りかかる者があると、赤子を抱くように頼むのだという。言われた通りに赤子を抱いてあげると、次第に重くなって、離そうとしても離れず、最後には殺されてしまうこともある。
 産女に関する伝承は多様で、赤子だと思っていたら石だったとか、藁打槌だったとか、木の葉だったという話もある。

 産女との遭遇は必ずしも悪い結果になるばかりではないようで、赤子を抱けば大力を授かるともいわれる。
 長崎県島原半島では、こうして授かった大力は女子に代々受け継がれるのだという。
 また、秋田県ではこの大力をオボウヂカラと呼ぶ。オボウヂカラを得た者の姿は、他者には手や足が4本ずつあるように見えるという。

 産女は女の姿の妖怪だとされる一方で、茨城県ではウバメトリ、東京都三宅島ではオゴメ、長崎県壱岐ではウンメドリと呼ばれ、鳥の怪だとされる。これは中国の古書などに見られる姑獲鳥という鬼神に由来しているらしい。
 また、九州地方ではウグメやウーメと呼ばれ、海上に現れる怪火だといわれている。

産女の伝承・逸話

山形県

 最上郡大蔵村に伝わる。
 ある郷士が、乳飲み子を抱えながら波間から出てきた女に「念仏を百遍唱えている間、この子を抱いていてください」と頼まれた。郷士が赤子を抱くと、女は念仏を唱え始める。その念仏が進むうちに赤子がどんどん重くなってきて、どうにか必死に耐えると、女は「これで成仏できます」と言って、赤子とともに消えてしまった。それ以来、郷士は怪力を得たという。

山口県

 豊浦郡乗貞や蓋井島に伝わる。
 怪物のようなもの。身持ちの女が死んだときは分身せしめてから埋葬しないとウブメになるという。

愛媛県

 越智郡清水村に伝わる。
 川から赤子の声が聞こえるというもの。夜更けに通ると両足にウブメがもつれることがある。履いている草履を「これがお前の親だ」と言って投げれば、一時的にではあるが泣き止むのだという。

福岡県

 西海岸地方に伝わる。
 海で死んだ者がウブメになるといい、シキユウレイとも呼ばれる。舟や島に化けるとされる。
 これにアカトリ(杓)を貸せと言われたときは、底を抜いてから渡さないと舟を沈められてしまう。また、これにつけられたときは錨を入れるとよいが、それでも取られてしまうので、まずは石を入れてだますのだという。煙草を飲めば消えるともいう。

産女の画図

【産女の画図が掲載されている主な資料】
 資料名 作者 制作年 妖怪名 画像
『化物づくし』(個人蔵) 不明 不明 うふめ
『百怪図巻』(福岡市博物館蔵) 佐脇嵩之 1737 うふめ 画像
『画図百鬼夜行』前篇 陽 鳥山石燕 1776 姑獲鳥 画像
『化物絵巻』(川崎市市民ミュージアム蔵) 不明 1800年代前半? うふめ

産女名彙

 各地に伝わる産女を意味する呼称、あるいは産女に類する妖怪の呼称などを都道府県別に列挙する。

茨城県

ウバメトリ

東京都

ウグメ、オゴメ

山口県

ウバメ

佐賀県

ウグメ

長崎県

ウーメ、ウゥメ、ウグメ、ウンメドリ、ウンメン

熊本県

ウグメ

大分県

ウグメ


『百怪図巻』「うふめ」 佐脇嵩之 1737


『画図百鬼夜行』前篇 陽「姑獲鳥」 鳥山石燕 1776


『幽霊之図 うぶめ』 月岡芳年

主な参考資料

[文献]
『鳥山石燕 画図百鬼夜行』: 57ページ 高田衛 監修、稲田篤信 田中直日 編 国書刊行会 1992
『全国妖怪事典』(小学館ライブラリー): 41、183-184、201、213ページ 千葉幹夫 編 小学館 1995
『妖怪事典』: 56-57、77ページ 村上健司 毎日新聞社 2000

白沢

妖怪の事典

妖怪が集う遊宴

【PR】楽天ROOM