轆轤首/飛頭蛮
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【ろくろくび】
日本に伝わる妖怪。抜け首とも呼ばれる。
轆轤首の概要
一般的には、首が長く伸びる妖怪として知られる。
他に、頭が体から離れて飛ぶものや、頭と体が細い筋で繋がっているものもいる。
轆轤首についての記載は、江戸時代になってから怪談集や随筆などに見られるようになった。
夜中に抜け出した首を誰かが目撃するという話が定番である。
轆轤首の多くは女だとされているが、男性が轆轤首だった例もないわけではない。『蕉斎筆記』には次のような話が掲載されている。
とある夜のこと。増上寺の和尚の胸のそばに人の首が現れた。和尚がその首を取って投げると、首はどこかへ去った。翌朝、下総出身の下男が「気分が悪い」と言って寝ていたが、昼過ぎに起きてきて、和尚に暇を乞う。和尚が理由を訊いてみると、下男は「昨晩、部屋に首が来ませんでしたか?」と訊ねる。確かに首が来たと伝えると、下男は、自分は抜け首の病に罹っているのだと告白した。昨日、手水鉢に水を入れるのが遅れたことを叱られたが、そんなに叱らなくてもいいだろうにと思っていたら、夜中に首が抜けたのだという。結局その下男は、奉公に差し支えるからと里に帰っていった。下総国には抜け首の病が多いのだそうである。
轆轤首に類似する海外の妖怪
「ろくろくび」に「飛頭蛮」という漢字を当てる文献もあるが、これは中国に伝わる飛頭蛮に由来している。
『和漢三才図会』によると、飛頭蛮は大闍婆国(ジャワ)や嶺南(広東、広西、ベトナム)などに現れたという。昼は普通の人間のように見えるが、夜には首が体から離れ、耳を翼のように使って飛行し、虫やミミズや蟹などを食べる。そして、朝になるとまた自分の体に戻る。飛頭蛮である者の首の周りには糸のような赤い傷跡があるそうである。
また、マレーシアではポンティアナやペナンガランと呼ばれる妖怪が伝えられている。
これらも首が体から離れて飛ぶのだが、その際には内臓までぶら下げているというから、かなりグロテスクである。
日本の轆轤首のイメージは、このような中国南部から東南アジアにかけての地域に伝わる妖怪の影響を受けながら形成されてきたのだろう。
轆轤首の画図
【轆轤首の画図が掲載されている主な資料】
資料名 |
作者 |
制作年 |
妖怪名 |
画像 |
『化物づくし』(個人蔵) |
不明 |
不明 |
呂久呂頭 |
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『百怪図巻』(福岡市博物館蔵) |
佐脇嵩之 |
1737 |
ぬけくび |
画像 |
『画図百鬼夜行』前篇 陽 |
鳥山石燕 |
1776 |
飛頭蛮 |
画像 |
『化物絵巻』(川崎市市民ミュージアム蔵) |
不明 |
1800年代前半? |
ぬけ首 |
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『百怪図巻』「ぬけくび」 佐脇嵩之 1737
『画図百鬼夜行』前篇 陽「飛頭蛮」 鳥山石燕 1776
『北斎漫画』「ろくろ首・三目の眼鏡」 葛飾北斎
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主な参考資料
[文献]
『鳥山石燕 画図百鬼夜行』: 64ページ 高田衛 監修、稲田篤信 田中直日 編 国書刊行会 1992
『妖怪事典』: 365-366ページ 村上健司 毎日新聞社 2000
『日本妖怪学大全』: 179-204ページ 小松和彦 編 小学館 2003
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