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ぬらりひょん

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 江戸時代の絵巻や図譜に掲載されている老人の妖怪。
 あるいは、岡山県に伝わる海坊主の仲間。

ぬらりひょんの概要

 江戸時代の絵巻や図譜では、頭の大きな老人姿の妖怪として度々描かれています。
 ぬらりくらりとした捉えどころのない妖怪なのでしょうか。解説文がとくに記されていないので、当時の人々がぬらりひょんをどのような妖怪として認識していたかを明言するのは困難だと思われます。

 しかし、昭和以降の妖怪関連書籍では、ぬらりひょんは無断で人の家にあがってお茶をすする妖怪であるとか、さらには妖怪の総大将であるといった大仰な説明がされるようになりました。

 ぬらりひょんを妖怪の総大将とする説の発端になったと思われる記述が、藤沢衛彦の『妖怪画談全集 日本篇 上』(1929)にあります。藤沢は『妖怪画談全集』に鳥山石燕の描いたぬらりひょんを掲載した際に、その貫禄ある風貌からの想像なのでしょうか、次の文言を付けたのです。

まだ宵の口の灯影にぬらりひょんと訪問する怪物の親玉

『妖怪画談全集』日本篇 上 藤沢衛彦 中央美術社 1929

 「妖怪の総大将は誰か」と訊ねたら、江戸時代であれば、草双紙で化け物の親玉として描かれることの多かった見越入道やももんがあ、あるいは『稲生物怪録』に登場する山本五郎左衛門の名が挙がったかもしれません。しかし現代では、ぬらりひょんを第一に思い浮かべる人が大多数になりそうです。

 一方、民間伝承でぬらりひょんといえば、岡山県に伝わる妖怪の名称です。しかし、岡山県のぬらりひょんは海坊主の仲間であり、老人姿のぬらりひょんとの関係はよく分かりません。

ぬらりひょんの画図

【ぬらりひょんの画図が掲載されている主な資料】
 資料名 作者 制作年 妖怪名 画像
『化物づくし』(個人蔵) 不明 不明 ぬらりひよむ
『百怪図巻』(福岡市博物館蔵) 佐脇嵩之 1737 ぬらりひよん 画像
『画図百鬼夜行』前篇 風 鳥山石燕 1776 ぬうりひょん 画像

ぬらりひょんの伝承・逸話

岡山県

 備讃灘の辺りに伝わる海坊主の類。
 人の頭部ぐらいの玉が海の上に浮かんでいて、これを見つけた人が船で近づいて取ろうとしても、玉はぬらりと避けて海中に沈んでしまいます。やがてまた浮かび上がりますが、取ろうとすればまたぬらりとかわして沈んでいきます。それを幾度も繰り返して、人をおちょくるのだそうです。


『百怪図巻』「ぬらりひょん」 佐脇嵩之 1737


『画図百鬼夜行』前篇 風「ぬうりひょん」 鳥山石燕 1776


東京都調布市、鬼太郎ひろばのぬらりひょん(2019年9月撮影)

主な参考資料

[文献]
『鳥山石燕 画図百鬼夜行』: 84ページ 高田衛 監修、稲田篤信 田中直日 編 国書刊行会 1992
『妖怪事典』: 255、258ページ 村上健司 毎日新聞社 2000

白沢

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