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元興寺

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【がごぜ】

 大和(奈良県)の元興寺に出たという鬼。

元興寺の概要

 江戸時代の文献や絵巻に見られる妖怪だが、元々は『日本霊異記』『本朝文粋』『扶桑略記』『水鏡』などにある話である。

 敏達天皇の頃。ある農民の前に雷が落ち、見るとそこには小さな雷神がいた。雷神は「自分の願いを聞いてくれれば子供を授ける」という。農民が雷神に言われたとおりに楠で船を造り、中に竹の葉を浮かべると、雷神は天に帰った。
 その後、農民の家に子供が生まれ、力強く成長していった。やがて子供は元興寺の童子になり、元興寺の鐘楼に棲んでいた鬼を退治した。鬼は髪と頭皮だけを残して逃げていったので、鬼の血の跡を辿ってみると、とある場所で途切れた。そこは寺で悪行を働いていた者を葬った場所だったので、鬼の正体が霊鬼だとわかったという。

 鬼を退治した子供は、後に道場法師という僧になったとされる。

元興寺の画図

【元興寺の画図が掲載されている主な資料】
 資料名 作者 制作年 妖怪名 画像
『化物づくし』(個人蔵) 不明 不明 かごぜ 画像
『百怪図巻』(福岡市博物館蔵) 佐脇嵩之 1737 がごぜ 画像
『画図百鬼夜行』前篇 風 鳥山石燕 1776 元興寺 画像

妖怪を総称する児童語としてのガゴゼ

 子供を脅かしたり、お化けを意味する言葉として、ガゴゼ、あるいはガゴゼに近い語彙が関東から西日本にかけて伝わっている。

茨城県

ガンゴジ

三重県

ガゴゼ

滋賀県

ガゴゼ

京都府

ガゴゼ

奈良県

ガゴゼ

和歌山県

ガゴゼ

徳島県

ガゴジ、ガンゴジ

 ガゴゼやガゴジという言葉がお化けという意味で使われるようになったのは江戸時代かららしく、由来はやはり元興寺の鬼だといわれる。ただし民俗学者の柳田國男の見解は異なり、「咬もうぞ」と言って現れることにちなむのではないかと考えていた。


『化物づくし』「かごぜ」 作者不詳


『百怪図巻』「がごぜ」 佐脇嵩之 1737


『画図百鬼夜行』前篇 風「元興寺」 鳥山石燕 1776

主な参考資料

[文献]
『鳥山石燕 画図百鬼夜行』: 85ページ 高田衛 監修、稲田篤信 田中直日 編 国書刊行会 1992
『妖怪事典』: 100-101ページ 村上健司 毎日新聞社 2000

白沢

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